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最高裁判所第二小法廷 昭和38年(オ)280号 判決 1963年10月04日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人福士米次郎の上告理由について。

所論は、原判決は憲法二九条に違反する旨主張するけれども、その実質は原判決の単なる法令違反を主張するに帰し、右違憲の主張はその前提を欠き、採るを得ない。而して、原判決が引用する一審判決は、事実摘示欄において被告(控訴人、上告人)訴訟代理人の主張として、「被告は、本件不動産の所有権を訴外Dより取得したものであるが、同訴外人は共同相続人である原告(被控訴人、被上告人)等と協議による遺産分割の結果本件不動産につき単独の所有権を取得していたものである。更に、仮りに右協議による遺産分割の事実が認められないとしても、右訴外Dは原告等の代理人として原告等の本件不動産に対する共有持分についても有効に処分行為をしたものであるから、被告は適法に本件不動産の所有権を取得し、該所有権取得に副う本件不動産登記名義を適法に有しているものである」と陳述した旨記載があり、またその理由欄においてその認定せる事実関係から、「訴外Dが遺産分割協議の結果単独にて本件不動産の所有権を取得し、これを被告が承継取得したとする被告の主張は容れられない」旨及び同様その認定せる事実関係から「訴外Dが原告等の代理人として原告等の本件不動産に対する共有持分についても有効に処分行為をしたものであるとする被告の主張も容れられない」旨判示していることは記録上明らかである。従つて上告人のこの点に関する民訴法違反の主張は、その前提を欠き、採るを得ない。そして、原判決の引用する一審判決の右各判示認定は、その挙示する証拠関係、事実関係からこれを肯認し得るところであり、論旨中この点に関する非難は、原審の認定にそわない事実を前提として、原審の適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するかまたは独自の見解に立つて原判決を非難するに帰し、採るを得ない。更に原審が上告人(被告)は民法一七七条の第三者に該当せざる旨判示したことについては、共同相続した不動産につき、共同相続人の一人が勝手に単独所有権取得の登記をし、この者からさらに第三取得者が移転登記を受けた場合には他の共同相続人は、右第三取得者に対し自己の持分を登記なくして対抗できるものと解するのを相当とする(最高裁判所昭和三五年(オ)第一一九七号、同三八年二月二二日第二小法廷判決参照)。これと同旨の判断のもとに上告人が民法一七七条の第三者に該当しない旨判示した原審の判断はこれを肯認し得る。所論は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を非難するものであつて採るを得ない。

原判決に所論の違法は存せず、論旨は、すべて採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官    奥   野   健   一

裁判官    山   田   作 之 助

裁判官    草   鹿   浅 之 介

裁判官    城   戸   芳   彦

裁判官    石   田   和   外

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